医療?健康
ラットのガス交換閾値と乳酸閾値はトレーニング時の有効な中強度指標になる
ラットで未確認だったガス交換閾値を同定し、この閾値と乳酸閾値が有酸素運動トレーニング時のパフォーマンス向上効果を分岐する中強度運動指標になることを確認しました。ラットの有用な中強度指標を提供する今回の成果は、健康増進分野など運動の基礎研究者にとって基盤的な情報となります。
有酸素運動時、強度を徐々に上げると、ある強度から血中乳酸値が上昇し始め、酸素摂取量に対する二酸化炭素排出量の急増が起こります。前者の変化点は乳酸閾値(LT)、後者はガス交換閾値(GET)と呼ばれます。ヒトのGETやLTは最大酸素摂取量(VO2max)の45?74%に存在する中強度運動指標であり、有酸素運動能力の向上にはこの閾値以上でのトレーニングが不可欠です。一方、モデル動物のラットでは、LTの存在は確認済みですが、GETは未確認でした。また、ラットのLTやGETがヒトと同じような強度指標となるのか、その有用性も不明でした。
本研究チームは走行運動中のラットのLTを同定するモデルを確立しています。本研究では、このモデルとヒトで標準的なGET同定方法(V-slope法)を組み合わせて、GETとLTの同時同定を試みました。さらに、同定したGETおよびLTとVO2maxの関係や、LT未満とLT超えの異なる強度の走運動トレーニングに伴うLT、GET、VO2maxの変化を検討しました。その結果、ラットのGETとLTは41.0?65.5%VO2maxの強度で同期的に出現し、LT超えでトレーニングしたラットでのみ、最大(VO2max)と最大下(GET、LT)の有酸素運動能力が改善しました。
以上の結果は、ラットのGETとLTが有酸素運動能力を高めるトレーニング処方において、ヒトと同様に有効な中強度指標になることを示しています。本研究成果により、ヒトの運動処方への橋渡しとなるラット運動研究が一層、活性化することが期待されます。特に、呼気ガスから非侵襲的かつ簡便に同定可能なGETは、幅広い応用が見込まれます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
365体育投注体育系/ヒューマン?ハイ?パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)征矢 英昭 教授
北海道医療大学リハビリテーション科学部/全学教育推進センター
井上 恒志郎 講師
掲載論文
- 【題名】
-
Setting Treadmill Intensity for Rat Aerobic Training Using Lactate and Gas Exchange Thresholds
(ラット有酸素性トレーニングにおける乳酸閾値とガス交換閾値を用いたトレッドミル運動強度の設定) - 【掲載誌】
- Medicine & Science in Sports & Exercise
- 【DOI】
- 10.1249/MSS.0000000000003562
関連リンク
体育系ヒューマン?ハイ?パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)