医療?健康

化膿性脊椎炎の感染部位を手術で固定すると骨破壊が抑制され治癒に向かう

研究イメージ画像
(Image by crystal light/Shutterstock)
 背骨などへの細菌感染による化膿性脊椎炎について、感染部位を正常な背骨で挟んで固定する「後方固定術」が感染を抑えるメカニズムを、動物モデルで調べました。骨の安定性が増すと破骨細胞の働きが抑制され、骨の破壊が防がれるため、感染部位を直接治療しなくても感染が制御できると考えられました。

 化膿性脊椎炎は、背骨や椎間板に細菌が感染して起こる病気です。悪化すると腰痛や下半身のしびれ?麻痺を引き起こします。しかし、椎間板は血流が少なく抗菌薬が届きにくいため治療が困難で、早期発見と徹底した治療が重要となっています。これまでの治療は抗菌薬と安静が基本でしたが、最近では手術を中心とした治療が広まっています。感染した椎間板を挟む正常な背骨を金属のスクリューとロッドで固定する「後方固定術」も感染を抑える治療法の一つです。しかし、感染部位を直接治療しないのに、なぜ感染が抑えられるのか、その仕組みは分かっていませんでした。

 本研究では、新しい動物モデル「化膿性脊椎炎-後方固定モデルラット」を作製し、後方固定術が感染を抑える仕組みを調べました。このモデルは人体における感染と手術を真似したもので、ラットのしっぽの椎間板に細菌を注入して感染を再現し、感染した椎間板を挟むしっぽの骨にスクリューを入れて固定します。研究の結果、感染部位を挟んで固定するとしっぽの骨が壊れるのを抑えられること、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きが弱まることが確認されました。つまり、後方固定術によって骨の安定性が増し、破骨細胞の働きを抑えることで、骨の破壊が防がれ、感染のコントロールに役立つ可能性が示唆されました。

 本研究チームはこれまで、臨床研究で化膿性脊椎炎に対する後方固定術の有効性、安全性、手術のタイミングなどを調べてきました。今回の研究は、後方固定術の効果を基礎的な仕組みから裏付けるものです。この成果は、より良い治療法の確立につながることが期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

365体育投注 医学医療系
船山 徹 講師
蒲田 久典 医学学位プログラム(一貫制博士課程)4年次

掲載論文

【題名】
Posterior fixation without debridement for pyogenic spondylodiscitis can promote infection control: Initial evaluation of a pyogenic spondylodiscitis posterior fixation rat model
(化膿性脊椎炎に対する後方固定術は感染制御を促進する:化膿性脊椎炎-後方固定モデルラットにおける初期評価)
【掲載誌】
European Spine Journal
【DOI】
https://doi.org/10.1007/s00586-025-08750-y

関連リンク

医学医療系
医学学位プログラム