高齢者と介護者の"薬を減らすこと"への態度を測定する日本語版指標を開発
多剤併用は世界的な課題であり、その適正化には患者と家族の関与が不可欠です。今回、国際的に用いられている"薬を減らすこと"への患者?介護者の態度を測定できる指標であるrPATD(the revised Patients' Attitude Towards Deprescribing)を日本で検証し、適用可能であることを確認しました。
高齢者では複数の病気により薬が増え、副作用や飲み間違いのリスクが高まります。この「多剤併用(ポリファーマシー)」は世界的な課題であり、日本でも薬を適正に使用して、必要に応じて減らす「減薬」の推進が求められています。しかし、医師が減薬可能であると判断しても、患者本人や家族による同意がなければ、減薬を進めることができない場合があります。そこで、患者本人と家族の減薬に対する意思決定を支えるためには、患者や介護者が減薬についてどう考えているかを医療者が把握することが重要であり、そのための指標が必要となります。
海外では、オーストラリア?モナシュ大学のReeve博士らによって、減薬に対する態度を測定する質問票rPATD(the revised Patients' Attitudes Towards Deprescribing)が開発されました。rPATDは、これまでの多くの研究から明らかになった、減薬を「進める要因」と「妨げる要因」を尋ねる質問項目を備えており、2025年11月時点で13言語、24カ国で広く活用されています。しかし日本語へは翻訳されておらず、日本で利用可能かは明らかではありませんでした。そこで本研究では、rPATDを国際ガイドラインに沿って日本語に翻訳し、日本の高齢者と介護者に利用できるかを検証しました。調査の結果、日本語版rPATDは理解しやすく、回答も安定していることが確認できました。
rPATDを使うことで、患者や家族の減薬に対する態度や考えが明らかになり、医師や医療従事者との対話が促進されます。診察室や薬局など医療現場での減薬支援や研究に活用することで、高齢者とその介護者が納得できる減薬の実現が可能となります。これにより、患者と介護者を中心とした安全な薬物治療の推進に貢献することが期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
365体育投注医学医療系舛本 祥一 講師
北海道科学大学薬学部
石井 充章 講師
慶應義塾大学医学部
大谷 壽一 教授
掲載論文
- 【題名】
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Translation, cross-cultural adaptation and validation of the revised Patients' Attitudes Towards Deprescribing (rPATD) questionnaire in Japanese.
(revised Patients' Attitudes Towards Deprescribing(rPATD)の日本語翻訳と文化適応性および妥当性の検証) - 【掲載誌】
- Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy
- 【DOI】
- 10.1016/j.rcsop.2025.100685